Coffee Journey Vol. 5,6,7「コスタリカ共和国:Vajusa Azul/El Cipres」-Written by バイヤー小林
2024.08.05去る4月、中米コスタリカに滞在しました。
ハワイといえば、”Aloha(アロハ)”、ケニアならば、”Jambo(ジャンボ)”みたいに、その国のお約束の言葉、ってありますよね。コスタリカにもあるんです。
それは、”Pura Vida(プラ・ヴィーダ)”。
英語にすると、”Pura Life”。意訳すると、良い人生・人生を楽しもう、みたいなそんなところでしょうか。でも、現地での実際の使い方としては、”Hello”に近いですかね。
さて、そんな、Pura Vidaな国コスタリカ。言わずと知れた、コーヒーの一大生産地です。
首都サンホセは起伏の激しい丘陵地帯にあり、
(暑いなあ・・・)
と思う低地エリアもあれば、そこから30分も丘を上がると一気に標高1,000m地帯へ。
(うわっ、涼しい・・・)
そう、専門用語でいうところの”Micro Climate”。1つの場所に多様な気候が存在しており、それが、素晴らしい農作物をたくさん生み出すのです。
コーヒーもその一つ。今回は、現地の生産者さんであるフリオさん、クリスティアンさんにお目にかかりました。
フリオさんはコーヒー豆の生産者。クリスティアンさんは、生産者さんでもある一方、バリスタというべきか、コーヒー豆の品質評価もできる稀有な方です。
時間の都合上、今回はフリオさんの農園へ。
一番面白かったのは、やっぱり、”Micro Climate”。
農園内、とある傾斜地帯へ来たときパッと見は斜面にコーヒーの木が植え付けられているだけです。
でもフリオさんから説明を受けました。
「この斜面の下部はゲイシャ種、上部はパカマラ種。それはね、ゲイシャ種は風通しを好まないんだ。でも、パカマラ種は風通しが良い。だから、同じ斜面でも風通しに合わせて植える品種を変えているんだよ。コーヒーの木が好む気候で育ててあげないと、やっぱり美味しいコーヒーは生まれないからね。」
なんと!!!
確かに、フリオさんの農園はそれほど大きい方ではありません。いわゆる、ブティックファームと言えるでしょう。
だからこそ、ということもあるのでしょうが、ここまで、コーヒーファーストで栽培しているのか、、、Pura Vidaのイメージとかけ離れた、シリアスな世界がそこにありました。
さて、農園見学を終え、場所を移して今度はクリスティアンさんのシリアスな品質評価が始まりました。
とても、ランチを一緒していたときのような柔らかい目つきではない。厳しい、シリアスな目つきです。
「よし、この品種はOK!」
ついに、「UPEPO」のコーヒー豆として日本に送られることが決まった瞬間です。
シリアスということでもう一つ。
コーヒーに限らず、僕は仕事上、これまで世界中でたくさんの農園を訪れてきました。今回のこちらの農園ほど急傾斜・断崖絶壁が続く場所は初めてです。
歩くのが本当にしんどい。多少標高があることもあり息切れもするのですが、それだけではなく、そもそも、一歩一歩足の置き場にも注意する、腰に負担もかかる、そんな場所です。
死と隣り合わせ
というと、それはさすがに大げさです。でも、この農園を訪れて、現場に足を踏み入れた僕の気持ちとしては、(ああ、この壮絶な環境で働く現場の人の努力の末、美味しいコーヒーは生まれているのか・・・)ということ。
あれ以来、”一杯のコーヒーのありがたみ”を感じずにコーヒーを飲めなくなってきた今日この頃。
コーヒーがあまりに身近なのでそんな意識は持っていなかったのですが、今回のコスタリカの旅で、Pura Vidaな人々が生み出した本気の一粒のコーヒー豆への感謝の気持ち、それを強く意識せずにはいられなくなりました。
もちろん、皆さんのお手元で、是非シンプルに楽しんでくださいね。
でも、どこかで、笑顔と汗と涙と、、、気候同様に多様なコスタリカの人々の生み出す”風”を感じて頂ければうれしいです。
バイヤー小林