世界中の「幸せ」を集めたナチュラルセレクトショップ

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佐賀県伊万里市の茶農園「日南茶藝(ひなたちゃげい)」

2023.09.01

スタッフ松下です。2023年8月、私は佐賀県伊万里市の深~い山のてっぺんにいました。

始まりは、スタッフMizuが「とっても美味しい佐賀のお茶がある」と、プレゼントしてくれたこと。

松下、日南茶藝の萎凋茶に出逢う


美味しい、とは聞いても、私も美味しい茶所、九州の生まれですし、夫は静岡と、緑茶に関しては少し舌が利きます。「萎凋茶か。初めましてだな。」そう思いながら淹れ、飲んでみて、最初に感じたのは驚き。

これが緑茶?なんて個性的!緑茶でありながら中国茶のようで、花の香りが鼻孔を抜けていきます。何と言ってもお茶そのものの主張が感じられる。

私が初めて飲んだ萎凋茶は2019年産。食事にもお菓子にも合うので、以来、折に触れて届けてもらって来た日南茶藝さんの萎凋茶、皆さんにも是非知っていただきたくて、お届けをスタートします。

「日南茶藝」から届く茶葉と手紙に誘われて


日南茶藝さんは、横田さんご家族が佐賀県伊万里市にある日南郷という場所で自然栽培で営む茶園です。

注文する度に、茶葉と共に、奥様である知美さんから、とても気持ちのこもった手紙が一緒に届くのでした。

いま、伊万里がどんな天候で、茶畑がどういう景色かとか、おすすめの飲み方とか。私はいつもそれが楽しみで、お茶を飲みながら何度も読み返していました。

見たこともない景色が眼前に広がり、茶葉になる前の緑々としたフレッシュな香りまでも届くような手紙からは、人となりが感じられ、どうしても会いに行きたくなったのです。

緑をぐんぐん乗り越えて、日南郷


標高450m、伊万里の街を見守るようにそびえる国見岳の頂(いただき)に日南茶藝さんはあります。日本の原風景、とも言える棚田を横目に、緑のカラーバリエーションを楽しみながらぐんぐん山道を登って行ったところのてっぺん。
昔から、日南郷で作られるお茶は「日南郷茶」と呼ばれ、地元では美味しいお茶として有名なのだとか。

横田夫妻と自然栽培



戦後の農地開拓から始まり、代々この地で茶農家を営む3代目として生まれた横田満郎さん。茶栽培は収量安定の為に農薬散布が当たり前、という常識に疑問を持ち、有機栽培、特別栽培、減農薬栽培を経た後、2009年、農薬も肥料も使わない自然栽培をスタートさせます。

始めた当初、長年肥料を与えていた畑で枝数も新芽数も多かった茶の木は、無施肥栽培により一斉に葉を落としたことがあった、と横田さんは言います。茶の木は常緑樹ですので、年中葉をつけているもの。その茶の木がすっかり枝だけになったのを見て、横田さんご夫妻は茶の木の死を覚悟したそうです。

「それでも死が来るのならそれを受け入れよう。私たちは見守るしかない」。

翌春ー。

弱弱しい枝に、葉が芽吹きます。今では茶の木たちは土の状態に合わせた枝数で、収穫量は減ったものの、言葉にできないほどの奥深い、複雑な味と香りを持った茶葉を育む木へと再生を遂げました。

知美さんは言います。

「辛い時、つい何かに頼りたくなりますが、私たちは『何かに頼ったらまた負の連鎖が続き、出口が見えなくなる』と確信しているので、絶対に何かには頼らなかった。乗り越えた先にあるもの(世界)が素晴らし過ぎて、いつも自然の仕組みに感動します。」

畑との無言語コミュニケーション


それぞれの畑に、それぞれの個性があり、定義がない。だから面白い。そう真っ直ぐな瞳で語るお2人の言葉が、心に強く響きました。

自然にまかせて、自然に育ててもらう自然のお茶

その為に横田夫妻がすることは、畑と茶葉を良く見て、触れて。とっても手間はかかるけれども手作業でふうふう言いながら草むしりをして、茶摘み時期には木の状態を見ながら摘む量を調整して…。剪定や畑の管理など最低限のことはするけれど、人工的なものや人間側の意図で畑を良くしようとはしない。ただただあるがままの畑を受け入れ、畑と共に歩む日々。

言葉のない対話を、命を通して重ねているような印象を受けました。

▲茶畑にはどこにでもある霜被害を防ぐ防霜ファン。これすらも、いつか取ってしまいたいのだそう。

萎凋茶って?


  • 緑茶…茶葉を摘んだらすぐに蒸して作ります。
  • 萎凋茶…茶葉を摘んだ後、しばらく放置してわずかに萎れさせ(萎凋させる)、微発酵させることで独特の香り成分を引き出してから蒸し工程へ。

新鮮な内に作られるのが緑茶の定義とすれば、葉傷み臭と敬遠されていた萎凋香。しかし近年、この香りが逆に新鮮で、「萎凋茶」として広く知られるようになっています。

日南茶藝さんの萎凋茶は、その年によって味が異なるのもまた楽しみのひとつ。それもそのはず。あるがままを受け入れてできるその年のお茶、その上、お2人も毎年試行錯誤しながら萎凋させ、蒸しているから。

「もっときれいな萎凋香を出せる茶園はたくさんあると思います。でも、私たちは、そのお茶がもつ本来の味も大事にしたい」

おお!今年はこう来たか!それは、お2人からの便りのようで、私は毎度、思わず微笑まずにはいられません。

お茶は楽しい


同じ時はないように、同じお茶はふたつとありません。
様々なことを乗り越えた先にできる、その時だけのお茶。
その違いやゆらぎが当たり前で素晴らしい。受け止めるのは簡単ではないけれど、だから楽しい。

ー日南茶藝ー

楽しい時も、ちょっとしんどい時も、自然のお茶でほっと一息ついたら、茶園を通る気持ちの良い風を感じられそうな気がします。

スタッフ松下


▽今回ご紹介したのはこちら