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《スタッフコラムNo.41》大空の地 モンタナ – Written by Tomoko

2025.03.21

一度、米国のモンタナ州にあるミズーラという小さな町を訪ねたことがあります。季節はちょうど現地の春でした。

モンタナと聞いて、米国のどのあたりにある州かピンとくる方も少ないかもしれません。モンタナ州は米国本土の北西部にあり、カナダと国境を接する内陸州。州の西側はロッキー山脈などの山岳地帯、東側には大草原が広がっています。州の面積は米国の中でも大きい方で、日本の国土と同じ位ありますが、人口は百万人ほど。人間よりも野生動物の方が多いと言われるほど自然いっぱいの州で、広い空と大地が広がっています。

モンタナ州

映画「モンタナの風に抱かれて」(原題:The Horse Whisperer)を見たことがある方なら、大自然の中にある馬牧場を思い浮かべるかもしれません。そんな光景を見ると、モンタナ州が「Big Sky Country」という愛称で呼ばれるのも分かる気がします。

モンタナ・カレンダーから(Photo by Lawrence Dodge)

私が訪ねたミズーラはモンタナ州の中でも第二の都市ですが、それでも当時は町中にタクシーが4台しかないという、山岳の静かな田舎町です。その頃、モンタナ大学ミズーラ校の大学院で自然環境と野生生物の研究をしている友人がいて、その友人が周辺を案内してくれました。

赤枠がモンタナ州のミズーラ

友人は自然系の研究をしているくらいですから、アウトドアで生き抜く術を身に付けています。彼は野外実習としてひと夏をモンゴルの高原地帯で過ごし、野生動物を観察しながら遊牧民の人達とゲル(移動式の住居)で暮らしたこともあるとか。

私はそういう点ではまったくヘナチョコですから、そんな環境で何ヵ月も生活するなんて想像もできません。「お手洗いはどうするの?」「お風呂は入れるの?」と聞くと、「それ質問するとこじゃない。(You are asking wrong questions.)」と呆れられました。

そんなアウトドア初心者の私ですが、ミズーラで慣れない山登りをしたり、動物ウォッチングをしたりしているうちに、だんだん自然の中で健康的な生活をするのも悪くないと思い始めました。特にアウトドア派でもない私が楽しめるのですから、自然が好きな方はきっと満喫できると思います。

今回は、私がミズーラ周辺で訪れた場所のうち、三ヵ所をご紹介したいと思います。

| M Trail

友人が通うモンタナ大学ミズーラ校の裏手には小高い山があり、なぜかその山腹には大きな「M」のアルファベットが埋め込まれています。この「M」は、元々百年以上も前にモンタナ大学の学生が石を運び上げて大学のシンボル「M」の形に並べたのが始まりだそうですが、その後「M」が木製になったり石造りになったりという変遷を経て、今ではコンクリートをM型に流し込んだ巨大な文字になっています。

モンタナ大学のキャンパスから背景に見える「M」

山があれば登りたくなる。巨大な文字が埋まっていれば見に行きたくなる。そういうものなのかどうか、ご親切にその「M」の地点まで(一直線には登れないので)ジグザグに踏み固めた登山道が整備されており、それが「Mトレイル」と呼ばれています。私も「お散歩がてら」という軽い気持ちで「M」を見に行ったのですが、麓から「M」までは約1.2km、長い距離ではないものの、斜面が急であなどれない。ゼイゼイ言いながら登りました。

間近で見る「M」と、Mの足元で寝ている人達

やっと「M」まで辿り着いて見下ろすと、ミズーラの街が眼下に一望できます。心地よい風に吹かれながら体を休め、遠くまで広がる景色を眺めていると、思いがけない登山になってしまった散歩の疲れが癒されました。

「M」から見渡すミズーラの街

私が訪れたのは4月で、緑が一番美しい時期でした。モンタナは四季を通じて乾燥していて、雨が極端に少なく、木々が緑なのは年にほんの数ヵ月だそうです。夏になると茶色くなってしまうので、緑の時期は一年のうちでもごくわずか。そんな短い緑の季節に巡り合わせたのは幸運でした。

| Bison Range

ミズーラから北へ車で1時間ほどの場所に、バイソンを保全するための自然保護区があります。バイソンと言えば、大きくて黒くてモジャモジャの動物ですが、米国では建国当時から自然の象徴でもあり、原住民の文化とも深いつながりがあります。一時は絶滅の危惧に瀕していましたが、今でも保護の対象とされている貴重な動物です。

米国内務省の印章のバイソン
米国国立公園局の意匠のバイソン

バイソン保護区の中には何本か砂利道のルートがあり、入口で入場料を払えば自分の車で保護区に入ってルート沿いに走りながら自由に見学ができます。いわばセルフサファリでしょうか。見学者は砂利道のルートから外れない限り、車から降りて動物を眺めたり写真を撮ったりしても構いません。砂利道には柵もなく、草原にいる動物との間を隔てるものが何もないという大らかさ。

お目当てのバイソン

保護区内では、大草原でバイソンが自由に歩き回って草を食んでおり、堂々とした存在感で迫力満点。でも実は草食でおとなしいそうです。近づきすぎたり挑発されたりしない限り、危険な動物ではありません。車が通るルートの近くにもバイソンの群れがいるのですが、人間には気を留める様子もなく、悠然としていました。

よく見るとMountain Sheepがいます

保護区内では、バイソンだけでなく、他の動物や鳥も生息しています。何と出会えるかは季節や運にもよるかもしれませんが、私はアンテロープ、ヒツジ、カモ、タカ、ワシ、などを見ることができました。

| Bitterroot Valley

「モンタナ」という州名の由来は「山が多い」という意味のラテン語だそうです。ミズーラの南にも連山があり、その山間をビタールート川が流れていて、その谷間はビタールート谷と呼ばれます。

モンタナ・カレンダーから(Photo by Lawrence Dodge)

南北に長いビタールート谷ですが、その一部に野生動物保護区があります。この保護区は特に渡り鳥を守るために設立された鳥の楽園で、毎年100種を超える鳥が訪れて巣作りをするそう。この多様な鳥が生息するサンクチュアリでバードウォッチングのツアーに参加しました。

私はこの時、バードウォッチングに行くのは初めてだったのですが、「鳥がこんなに可愛いなんて!」と感激しました。フクロウやガチョウ、その他名前を知らない素敵な色や柄をした鳥達。本当は「鳥を眺めて何か面白いのだろうか・・・」とあまり期待せずに参加したのですが、いざ行ってみると全然見飽きませんでした。

モンタナの州鳥 Western Meadowlark

鳥の種類によっては、エサを食べた後しばらくしてから吐き出すのをご存じでしょうか。私はこのツアーで初めて知ったのですが、フクロウ等が獲物を食べた後、消化できない部位(骨や歯や毛など)を体内で丸めて塊にして口から吐き捨てるのだそうです。その塊はペリットと呼ばれるのですが、森の中にしゃがんで木の下をよく探すとそんなペリットが地面に落ちているのです。私が見つけたペリットは乾いていて臭いもなく、手で拾うのにも抵抗がありませんでした。つい夢中になって木々の根元に分け入ってペリットを探していたら、知らない間に触れたウルシにかぶれてしまいました。

ペリットの例

春とは言え、ビタールート谷はまだ寒く、上着を持って行かなかった私は水辺や森の冷たい空気に震えていました。でも自然の景色は素晴らしく、どこを見渡してもモンタナ州の「Big Sky Country」を実感できる眺めでした。

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こうしてミズーラで約一週間の滞在を終えた私は、来る前よりもちょっとだけアウトドアが好きになってモンタナを後にしたのでした。

by スタッフTomoko